短時間睡眠(ショートスリープ)の人の脳はどうなっているのか?

元気で短眠な人は存在する?

わたしの知り合いの某教授は、1日の睡眠時間が3時間です。「僕は子どものころから3時間睡眠」と豪語していて、勤務状況や仕事量も尋常ではないはど旺盛なので、おそらく本人のおっしゃるとおりなのでしょう。

睡眠障害の国際的な分類では、昼寝も含めて1日平均5時間以下しか眠っていないにもかかわらず、日中生活に支障をきたさないひとを、「ショート・スリーパー」と呼んでいます。

疫学調査では、人口の4~5 %前後という研究結果もあります。しかし、病気により睡眠時間が短いひとが含まれている可能性もあり、「元気で短眠」がどれくらいいるのかという点では、はっきりした数字はありません。

「ショートスリーパー」をウィキペディアなどで調べると、ナポレオン、エジソン、ダ・ピンチなどの著名人が書いてあります。
彼らの言葉や行動の記録からそう考えられているようですが、歴史上の人物でもう亡くなっているので、本人に直接確認することはできません。現代でも政治家や芸能人には、ショートスリーパーが多いのかもしれません。

短眠遺伝子は本当に存在するの?

「ショートスリーパー」は遺伝子の発現結果なのか、育った家庭環境の影響なのか、もしくは努力で睡眠時間を短縮できたのか?

まずは動物の遺伝子研究から見てみましょう。使った動物は、ショウジョウバエというハエです。アメリカ・ウィスコンシン大学のチアラ・テレッリ教授は、ショウジョウバエの中で1日中活動量の落ちない、はとんど眠っていない群があるのを発見しました。
その群の遺伝子解析をしてミニスリープ(minisleep:mns)という変異体があるのを発見しました。これが突然変異を起こし、「Shaker」という遺伝子になるというのです。が、ハエと人間では大違いです。

人間に短眠遺伝子は存在するのか、という疑問はまだ解決していません。また、人間の朝型、夜型には、時計遺伝子のひとつであるclock遺伝子が関与しているという報告もありますが、追試では確認きれていません。

短眠遺伝子の研究は、まだまだこれからのようです。逆に、毎日10時間以上眠るひとを、「ロングスリーパー」と呼びます。
物理学者のアインシュタインがロングスリーパーであったといわれています。睡眠時間が10 時間以上のひとは人口の約2 %程度いるといわれていますが、この中には、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害やはかの病気のひとも多く含まれていると考えられています。

原因はよくわからないとして、ショートスリーパーの睡眠の質は、たいへん効率的という結果が出ています。ショートスリーパーでは寝付きが早く、深いノンレム睡眠が十分とれているが、浅いノンレム睡眠やレム睡眠は少ない、というものです。

責任感の強いひとはどよく眠る?

性格や考え方、行動パターンも、ショートスリーパーとロングスリーパーでは違うといわれています。ショートスリーパーは社交的、外向的な性格で、活動量、仕事量も多いです。

一方、ロングスリーパーは内向的でじっくりものを考えるのに向いている、責任感が強い、といわれています。ショートスリーパーは肉食系の政治家、経営者ならば、ロングスリーパーは草食系の研究者、芸術家、といったイメージですね。

政治家と学者の双方を経験した竹中平蔵氏が書籍において興味深いことを書いていますます。「政治家のように忙しく動き回って30分おきに人と会うような仕事、つまり1日中ハイテンションでアドレナリンが放出しまくりというタイプの仕事は、多少の寝不足でも可能です。

ところが、精神を集中させる作業、すなわち勉強や原稿の執筆などの仕事は、ハイな状態では到底できない、というのです。

このように、仕事の内容が、睡眠時間やリズムに影響を与えることも、十分考えられることだと思います。

「じゃあ、睡眠時間は努力で短くできるの?」という問いに対する答えとしては、ある程度までは不可能ではないとお答えできると思います。

ナポレオンやエジソンも、細切れの仮眠を積極的に活用して、リフレッシュしていたようです。現在ど多忙のビジネスパーソンや芸能人にも、移動中の電車や自動車の中で仮眠をとって、エナジーアップしているかたが多いと思います。

ただし、人間にはそれぞれ必要な睡眠時間に個人差があります。日中のパフォーマンスを落としてまで短眠にチャレンジするのは、本末転倒です。睡眠環境の調整、適度な食事や運動、朝の光を浴びる、仮眠の活用、など、健康に支障のない方法での「睡眠の効率化」をおすすめしたいと思います。

質の高い睡眠(短深眠法) | 健康メモ