快眠のコツは「少しだけ睡眠不足」

「睡眠負債」は借金のように溜まっていきます

わたしの実家は小さな商売をしていました。子どものころ「商売は少しぐらい借金がないとダメなんだ」と親がいうのを聞いて、疑問に思ったことがありました。

おとなになった今なら、法人税対策や、ほかのお得意先や銀行との関係などから、適度の借金が経営に有効なことはわかります。

さて、意外にも、この「借金」という考え方、睡眠にも応用できるのです。借金と睡眠、どんなところがどんなふうにつながるのでしょうか?「睡眠負債」という有名な用語があります。単純にいうと、睡眠不足のことです。

7時間睡眠が必要なひとが、平日は5時間しか眠れないとします。1日あたり2時間、1週間で2時間×5日=10時間の負債を抱え込むことになります。

週末に寝だめをして、負債を返せればいいのですが、あまりに大きな負債ですと、そうもいきません。軽い寝不足ならば、週末は1~2時間ぐらい平日より余計に寝れば、かなりリラックスできます。

しかし約10時間の睡眠負債があって、それを週末取り返すとなると、土日は7時間+5時間=12時間ずつ寝ないと、完済できないことになります。

実際は、財務諸表のように数字上の緻密なバランスがあるわけではありません。しかし、毎日終電で次の日も朝早く出勤、しかも休日もなし!なんてことになると、毎週睡眠負債が確実に蓄積していきます。

体力と気力のあるうちはいいですが、負債額が莫大になってくると、健康に予想もできない大きなダメージを被るかもしれません。「予想もできない」というのは決して脅し文句ではなく、睡眠負債の蓄積でどういう健康被害が出るかの、厳密な研究は少ないのです。

なんとか病気にならずに生活できたとしても、脳には少なからずマイナスの影響が見られることは、数々の断眠実験が示しています。記憶学習能力の障害、高度な判断力、集中力の低下、情動の不安定、などです。睡眠不足の持続が、一過性の問題を通り越して、起こすこともわかってきています。

もしかしたら、いとんでもないミスをしてしまうかもしれません。

「睡眠貯金」はなかなか難しい

負債の話ばかりしてきましたが、貯金はできるのでしょうか?残念ながらムリのようです。休日に日々の睡眠負債以上の睡眠時間をとっても、かえってその日の寝付きに悪影響を与えたりして、うまくいきません。

平日寝不足だからといって、休日に夕方まで寝ていては、その日の夜は眠れなくなるのは自然です。睡眠に巨大な黒字を作ることができないのは、財政と違う特徴のひとつです。

では、負債は毎日、ゼロがいいのでしょうか?実はそうでもなく、少しだけ負債を抱えているのが、快眠のコツだといわれています。毎晩、必要量以上に十分な睡眠をとり続けていると、寝付きが悪くなります。なんとなくイメージがわきませんか?

週末を含め、毎日決まった時刻に起きて、決まった時刻に寝るのが理想的です。しかし多忙で睡眠不足になりがちのかたは、平日は少し睡眠不足気味で、週末はちょっとだけ寝坊。

こういうライフスタイルもアリだと思います。睡眠と商売、経営は、このように似ている部分も多いのが面白いところです。会社は破産しても会社更生法があるので法的に手続きできますが、人間の場合はそうはいきません。頭もからだも破綻しないよう、睡眠の帳簿はがっちり合わせていきましょう。

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