サーカディアンリズム(日周リズム)のうち、いちばんわかりやすいのは睡眠と覚醒の周期ですが、体温や血圧、ホルモン分泌、さらに細胞分裂などにもそれがあります。
人間の体のすべてがその影響を受けているのです。人間は、サーカディアンリズムに従って生きるはかありません。しかし、すべての人間が同じサーカディアンリズムの周期をもっているかというと、そうでもないのです。
そこから時には深刻な問題が生まれてきます。
たとえば、ある女性の例です。彼女は非常に寝つきが悪く、ベッドに入ってから眠りにつくまでにいつも4~5時間もかかります、そのため朝起きるのがつらく、会社へもよく遅刻していました。
それ以外は全く健康だったのですが、ある日とうとう遅刻常習を理由に解雇されてしまいます。そこで医師に相談すると、医師は彼女に睡眠日誌をつけてみるように勧めました。
その結果、会社をやめてからは寝つきの悪いのがすっかり治っていることがわかったのです。会社に行く必要のない彼女は、実は毎晩、前日に比べて4時間から6時間も寝る時間を遅くしてベッドに入っていました。
夜と昼がまったく逆転することもありました。医師は彼女に、1日24時間の周期に関わりなく、眠りたいときに眠る生活をするように勧めたのです。
それで見事に彼女の寝つきの悪いのは解消され、毎日たいへん調子よく生活することができるようになりました。彼女のサーカディアンリズムの周期は普通の人よりずっと長く、36時聞から38時間もあったわけです。
それがわかった彼女はフリーのライターとなり、以後はずっと1日36~38時間サイクルの生活を続けています。彼女のような人はまだまだほかにもいるはずです。
そんな人は9時から5時までの勤務パターンにこだわらなくてもよい職業を選択した方がいいでしょう。最近では、勤務時間に幅をもたせた「フレックスタイム」を導入する企業が増えていますが、未来社会では勤務形態がもっと柔軟になり、いろいろなサーカディアンリズムの周期をもった人たちが楽しく生きられるようになるのではないでしょうか。